一般財団法人村上城跡保存育英会は、明治十五年に創設された「村上鮭産育養所」を起源とし、百四十年余にわたり地域の教育・育英活動、そして郷土文化の保存に携わってまいりました。戦後には「村上城跡保存育英会」として組織を整え、昭和三十二年には新潟県史跡の所管者に位置づけられ、以来、城跡保存の歩みを担っております。平成五年には村上城跡が国史跡に指定され、行政を中心とした保存整備体制が整えられる中で、当会は地域団体として協力を続けております。
村上城は、戦国期には本庄氏の居城として、また江戸期には村上藩の政治・文化の中心として栄えました。現在は石垣や虎口、登城道などの遺構が往時を偲ばせ、山頂からは村上の町並みと日本海を一望することができます。建物は失われても、その存在感と歴史的価値は今も色褪せることなく、訪れる人々に深い感慨を与えております。
私たちは、この貴重な文化遺産を後世に正しく伝えることを使命と考え、石垣の維持や登城道の整備、史跡の公開活用、普及啓発活動に努めております。同時に、城跡を訪れる方々が安全かつ快適に歴史を体感できるよう環境を整え、子どもから大人まで幅広い世代に城跡の魅力を感じていただけるよう取り組んでいます。
村上城跡は地域の誇りであると同時に、全国の人々と歴史を共有できる貴重な舞台です。これからも行政機関や研究者、地域住民、そして全国から訪れる皆さまと力を合わせ、保存と活用の両立を図りながら未来へと受け継いでまいります。今後とも一層のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
一般財団法人村上城跡保存育英会
理事長 藤田 俊彦